医者にはおよそかかりたくないもので,歯医者はその中でも特別に遠慮したい存在だ。大抵の怪我は放っておいても治る,自然治癒するのだが,歯はそういうわけにはいかない(らしい)。
クルージング中にそれは起こった。舌で奥歯を撫でると明らかに違和感がある。ざらっとしたような縁を舐めている感触だ。いい年してキャンデイ(特濃ミルク)を2,3個口に放り込むもんじゃない。でもクライミングをしている時からの癖で「あめちゃん」だけは行動食として欠かせないのだ。ミルキーならもっとごそっと詰め物が取れていたかもしれないなんて慰めを自らに言い聞かせても仕方がない。そういや現役の頃,遠足で子どもからもらったヌガーを食べた時にもそんな事があった。学習しないといけないなあ。
歯科衛生士さんの優しい言葉が,なすがままにされている自分の境遇と秤にかけて上回っているから満更でもない。
そういうわけで港に着いたのはもうお昼前だった。昨夜からの大雨は朝方に止み,ずっと曇っていたが,舫を緩める頃には青空が広がってきたから時間を無駄にしたことにはならない。
配線用のケーブルが届くまでに,機器のアース端子を工作することにした。
とまあ,作業しながらも12時20分にはちゃっかりオケラをワッチするが,今日は残念がらチェックインできなかった。
仕事をしやすいようにキャビンに散らばったままの使わない工具をしまう。相当量ある食料もまとめておく。
岸壁に出ると,さっき以上に風が吹いている。行って来いロープを引くと隣艇と重なるほどだ。
しばらく船の挙動を見ていると,『LEIA』さんがやってきた。東の風に対処するように増し舫をするので少し手伝いをする。
一瞬の間に風向きが西に変わった。真っ黒い雲がどんどん押し寄せてくる。ほんの2,30mの距離なのに下着までずぶ濡れになってしまう。とんでもない嵐だ。とっとと帰ろう。
青空が広がってきた。海上強風警報が発令されているからか,漁船も出漁していないようだ。ヨット仲間は誰も来ていない。
従来の端子盤にはY型の圧着端子で止めていたが,丸型の圧着端子に替えた。
風はますます強くなってきたようだ。舫ロープが隣艇と擦れ合っている。
『LEIA』さんと喋り終わって帰ろうとしたら一瞬の間に風向きが反対になっていた。黒い雨雲がずんずん近づいてくる。
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