月のきれいな夜だったが,明るくなっても空の色は鈍い。
風が強くなってきたので,ジブを少し巻く。メインはその後1ポイントリーフしたが,すぐに解除した。
ワッチ交代して2時間後の6時,風が強くなってきたし雨も降ってきた。チョロジブにしてメインセール2ポイントリーフ。次は3ポイントリーフ(通常の4ポイント)だが,この風の様子だとせこせことメインセールのリーフチェンジを繰り返すよりは,(メインを下ろして)ジブだけで風下に行く方がよさそうだ。
15時頃,風力は6,小康状態に入ったと思ったが再び雨風が強くなってきた。波の様子を見ながら,時折ウインドベーンのPendulum Sheet Linesを外して手持ちで操作する。風速は40ktオーバー,ブローを含めて60ktか。
チョロジブで風下航,一昨年の海況よりは遥かにましだと思えば気も軽く,夕方18時前には在阪のヨット仲間とのアマチュア無線交信もほとんど電話状態の会話を楽しむほどの余裕があった。暗くなってからの晩飯は美味くないと18時過ぎににたんまり食っておいた。不規則な動きもなくヨットは安定して走っているのが何よりだ。
19時過ぎ,突然目に入ったのはマストが海中に没するシーンだった。コンパニオンウエイ入り口に座っていたので3方身体は保持されている。すぐに復元してホッとしていたが,キャビンにいた『BonanzaⅡ』さんが,左舷バースにうずくまっている。頭に怪我をしており,かなりの出血があった*1。さいわい血は止まったが左上半身が動かないようで,本人は骨折だという。すぐに彼のPLBで救援依頼をする。そのままでは落水した本人からの緊急信号と受け取られるかも知れないので,艇としてもinReach MiniからSOSを発信しておく。
床下まで浸水していたが,おそらく船体には異常なくハッチからの流入だろう。
inReach Minで細かい状況を説明するためにiPhoneを使いたいが,見当たらない。散らかった床のほとんど水没状態の中からようやく取り出して,inReach Miniブルーツース経由で大阪とは連絡を取ることができた。
先程までの大荒れが嘘のようにヨットは安定している。ウインドベーンのSERVO-PADDLEはもぎ取られていて,ロープでつながったまま曳航ボートのように船尾でゆらゆらしている。不安定な姿勢で引き上げてスターンバルピットに固定した。舵のダメージはなさそうで手持ちで針路を確保する。海況は変わらないのにヨットは先程の挙動が嘘であったかのように安定して走っている。
何時間ぐらい経ったろうか,AISが反応したのでVHFで連絡を取るが,相手はタンカーでこちらに近づいてきている。拙艇のどちら側を通過するのか聞いておく。
*1 床板を開けると真っ赤か。後で確認するとホールトマト缶がぶちまけられていただけだった。あ〜,よかったよとこの時は思っていた…
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